学資保険には、医療特約や育英年金など様々な特約を付加できるものもあります。
「学資保険でどの特約をつけたら良いかわからない」
「そもそも特約の内容が良くわからない」
という方も多いと思います。
このページでは、学資保険の特約をどのように選べばいいのか?を詳しく説明していきます。
学資保険は何を求めるか?によって付ける特約が違う
学資保険を選ぶ際は、「学資保険に何を求めるか」によって、加入の仕方が変わるため、目的によっては特約を付加した方が良い場合もあります。
学資保険にはどのような特約が付加できて、それぞれの特約がどのような役割があるかを理解して選ぶことが重要です。
学資保険に付けられる特約の種類とその役割
学資保険に付加できる特約には、主に以下の4種類があります。
■払込免除特約
契約者である親が死亡したり、所定の高度障害状態になったりした場合に、以後の保険料の払込が免除される特約です。
払込が免除されても、満期保険金やお祝い金などは、予定通り受け取ることができます。このため、親に万一のことがあっても子供の教育費を確保できます。
そもそも学資保険は、将来発生する子供の教育費の確保が目的ですので、学資保険にとってはなくてはならない特約と言えますね。
また、払込免除特約は、学資保険に自動で付加されている場合が多い特約です。
■医療特約
被保険者である子供が、病気やケガ等で入院した場合や手術を受けた場合に、所定の入院給付金や手術給付金を受け取れる特約。
この特約を付加すると、子供の医療保障を確保できますが、特約部分の保険料は掛け捨てのため、返戻率が低下します。
つまり、学資保険の本来の目的である、貯蓄の効率を下げてしまうため注意が必要です。
また、地方自治体によっては子供の医療費助成を行なっているところもあり、医療費が定額もしくは無料で済む場合があります。
子供の医療保険の必要性は大人と比べて低いので、加入時はよく検討してください。
■育英年金特約
契約者である親が、死亡したり高度な障害状態と認定されたりした場合に、満期まで子供の育英費用として、毎年一定額の年金(毎月10万円ずつなど)が支払われる特約。
この特約を付加すると、教育費だけでなく、子供を育てていくための毎月の生活費用や養育費用を準備できます。
ただし以下の点に注意しましょう。
- 収入保障保険(※)に加入していると保障内容が被ってしまう
- 学資保険を解約した場合、育英年金特約も同時に解約となる
このため、育英年金特約を付加する際は、すでに同じような保障に入っていないか確認するようにしましょう。
※収入保障保険とは
■個人賠償特約
例えば、以下の場合での損害賠償金を補償してくれる特約です。
- 他人を怪我させてしまった
- お店の商品を壊してしまった
この特約の特徴は、保険金額を数億円に設定できるため、損害賠償が高額になっても安心できます。
過去の判例では、子供の自転車事故により、親が9,500万円という巨額の損害賠償を負ってしまう事例もありました。
この事件の影響もあり、近年は自転車保険が義務化されるようになりました。
そして、自転車保険の代わりとして使える個人賠償保険(特約)の需要がとても高まっています。
ただし個人賠償特約は、すでに他で個人賠償保険に加入していたとしても、保険金を重複して受け取れないので、注意しましょう。
【保険会社別】学資保険に付けられる特約の比較まとめ
保険会社 /学資保険 |
最初から 付いている 特約 |
オプションで 付けられる 特約 |
---|---|---|
ソニー生命 学資保険(各型) |
・払込免除特約 | なし |
明治安田生命 つみたて学資 |
・払込免除 (機能として) |
|
フコク生命 みらいのつばさ |
||
JAこども共済 学資応援隊 |
・払込免除制度 (共済掛金 払込免除 不担保特則 を付加すると 無くすことも可) |
養育年金特則 指定代理請求特約 災害給付特約 共済金年金支払特約 |
日本生命 ニッセイ学資保険 |
・払込免除制度 (契約者が 死亡のみ) ・育英年金 |
払込免除特約 (3大疾病や 所定の障害状態も 免除対象) 医療特約はないが、 |
かんぽ生命 はじめのかんぽ |
・払込免除 (機能として) |
無配当災害特約 医療保障特約 |
以上のように、特約が付加できる範囲は、保険により大きく異なっています。
また、払込免除特約は、商品によって免除になる事由(死亡のみか、障害状態も対象になるのか)が違う場合もあるため、注意しましょう。
JA共済のように払込免除を外せる学資保険もありました。
学資保険に付ける特約で一番迷うのが医療特約
学資保険で付加できる医療特約は、保障内容に物足りなさを感じてしまうかもしれません。
その理由は、入院保障や手術保障がメインで、ケガで通院しても保障されないなど、保障範囲が狭い点です。
一方で、生命保険に医療特約を付加するか、医療保険に単品で加入すると
- 入院・手術保障
- ケガの通院保障
- がんの診断給付金
- 先進医療
も保障されます。
このため、学資保険で特約を付加するよりも、同じような保険料で保障範囲をかなり広げる方が良いでしょう。
学資保険の医療特約と都民共済の保障内容を比較
掛け金が同じ額(1,000円)となるよう、以下の条件で比較してみます。
◯かんぽ生命「はじめのかんぽ」に医療特約『その日から』を付加し以下の条件で試算
- 被保険者年齢:1歳(男性)
- 契約者年齢:30歳(男性)
- 保険料払込期間、満期:12歳払込済18歳満期
- 学資祝金:なし
- 基準保険金額:200万円
◯都民共済の「こども1型」
以上の条件で試算をし、保障を表にまとめると以下ようになりました。
かんぽ生命 | 都民共済 | |
---|---|---|
入院保障 | 入院日数×4,500円 (1日から120日まで) |
入院日数×5,000円 (1日から360日まで) |
入院初期保険金 | 1回の入院につき:22,500円 (入院保険金日額×5日分) |
× |
通院保障 | × | 通院日数×2,000円 (事故の場合)のみ |
手術 | 入院中に手術を受けた場合 →90,000円 (入院保険金日額×20日分) 入院中以外に手術を受けた場合 |
2万円・5万円・10万円・20万円 (手術の内容に応じた給付) |
放射線治療 | 45,000円 (放射線治療1回につき) |
× |
先進医療 | × | 1万円?150万円 |
がん診断 | × | 50万円 |
死亡・重度障害 | × (主契約の払込保険料が戻ってくるのみ) |
交通事故:500万円 不慮の事故:400万円 病気:200万円 |
契約者の死亡 | 保険料の払い込みが免除 (主契約・特約の両方) |
交通事故・不慮の事故:500万円 (重度障害を含む) 病気:50万円 |
ちなみに都民共済「こども1型」は上記の保障以外にも、
- 事故などで後遺障害を負った場合
- 犯罪(ひき逃げ事故も含む)に遭った場合の死亡保障
- 第三者への損害賠償を負った場合の補償
といった保障(補償)があります。
◯保障内容は都民共済の方が優れている
都民共済は、ケガの通院給付があるため、病気よりもケガをする可能性の方が高い子供にとって、より必要性の高い保障を準備できます。
そして都民共済では、子供が小児がんなどのがんと診断を受けた場合や、第三者への損害賠償に対する補償も準備できるので、給付の範囲はとても広いです。
また、給付額を比較しても都民共済の方が、
- 入院保障額が多いだけでなく、給付日数も多い
- 手術の保障額が大きい
- 本人の死亡保障も手厚い
という点で優れています。
このように、保険料を同じにして比較した場合、学資保険の医療特約よりも都民共済の医療保障の方が優れていると言えるでしょう。
学資保険に特約を付けると返戻率が100%未満になりやすい
学資保険は、特約を付加すると、貯蓄性に加えて手厚い保障も得られますが、貯蓄性が低くなるため注意が必要です。
特約の保険料は掛け捨てですので、毎月の保険料の支払いが増える一方で、満期の時などに受け取ることができる保険金の額は変わりません。
このため、特約を付加しすぎると、満期時の保険金の受取額が、保険料の総支払込額よりも下回ってしまいます。
これでは、子供の教育資金を効率良く貯めて確保するという、学資保険の目的が果たせません。
返戻率が高い学資保険でも、特約によって返戻率が大幅に低下することもあり得るので注意しましょう。
学資保険は特約を付けない+返戻率が高いものを選ぶのがベスト
学資保険の本来の目的は、子供の将来の教育費を効率良く”貯蓄する”こと。
銀行の預金だと、いつでも簡単に引き出せてしまい、利率もあまりつかないので、“貯めていたつもりが実は貯まっていない”というケースも多いです。
そこで学資保険に加入することにより、毎月保険料が強制的に天引きされ、預金よりも利率が高いので、効率的にお金を貯められます。
一方で、学資保険に特約を付加すると、返戻率が低下してしまうことから、特約を付加すればするほど、効率的に貯めることが難しくなるので注意しましょう。
もしも保障を準備したい場合は、学資保険に特約を付加するのではなく、他の方法で準備すると良いでしょう。
例えば、以下のような方法が考えられます。
- 医療特約→死亡保険の医療特約や、医療保険
- 育英年金特約→収入保障保険
- 個人賠償→自動車保険などの損害保険の特約、クレジットカードに付帯する
特に、個人賠償はクレジットカードに付帯すると150円程度の負担ですので、検討してみると良いでしょう。
このため、学資保険の本来の目的である教育資金を効率の良く貯めるためには、特約を付加せずに、できるだけ返戻率が高いものを選ぶことが大事です。
学資保険の特約の必要性はあまり高くない
その理由は以下の2点です。
- 返戻率が低下し、効率的に貯蓄できなくなる
- 特約で保障を準備するよりも、他の手段を用いた方がより優れた保障を得られる
特に特約の保険料は掛け捨てのため、特約を付加すると返戻率が大きく低下し、教育資金を効率よく貯められなくなります。
このような理由から、学資保険に加入するときは、出来るだけ特約を付加せずに、返戻率ができるだけ高いものを選ぶように心がけて、子供の教育費を効率良く準備していきましょう。
執筆・監修:FP品木彰